2017年3月13日月曜日

疑惑の豊洲、衰退の築地

海外にいても、豊洲問題は、先週、百条委員会なるものが開かれて、その政治ショーはますます、興奮のレベルを上げているのが伝わってくる。こうした公開議論はそれ自体が政治ショーとなって、 夏の都議会議員選挙に向けて、ますます、メディアもテンションを上げていくのであろう。
しかし、面白がっている場合ではなく、日本の将来に大きな問題を含んでいると思うのだ。多くのメディアが、豊洲を選んだ際の手続きと、移転先としての安全(安心)という2つの問題に注目する中、実は最も大事なことが完全に抜け落ちている。が、誰もそれを口にすることはない。 
東京の台所といわれる築地は、いまや、外国人観光客の東京の目玉と言ってもいい。先だっても、日本に研修で招聘されたウクライナ人の御一行の唯一の観光希望地が、築地であった。『汚くて、危ない』などと、軽々しく口にする行政のトップを尻目に、いまや外人東京ツアーには欠かせないスポットとなっている。
他方、実体経済的には、築地はどんどん衰退しているのである。平成元年に1080あった仲買数は、平成27年には、638にまで減少、取扱量の方も、平成元年の80万トンをピークに平成27年は、約41万トンにまで減少している。豊洲移転が決定された平成13年には、こうした衰退の傾向は兆候ではなく、完全に右肩下がりが確定している。移転の理由の一つに「手狭になった」築地から、広々とした「豊洲」に移れば、起死回生ができるという主張があったのであるが、築地の衰退の理由は誰が想像しても分かることでであるが、2つ、一つは日本人が魚を食べなくなった(1990年の一人95kg/年から、2014年の70kg/年)、次に流通形態が変わり、スーパーなどの大手小売は、流通コストを下げるように、産地からの直接仕入れになっていることである。このトレンドは、ネットコマースが進展すれば、更に拍車がかかっても反転することは難しいのは想像に難くない。
設備を良くすれば、人が戻ってくる、売上が上がるというのは、幻想である。これは、ビジネスを知らない(知りたくもない)政治家が公共事業予算を確保する時に、日本中で使ったロジックで、それがどれだけ無駄と、地域の衰退に拍車をかけてきたかについては、もはや検証の余地もないほど、事例の枚挙にいとまがない。
経済のどん詰まり解消に、観光を目玉とした政府にとっては、築地は欠かせない文化遺産のはずではあるが、豊洲推進派はついには、築地の安全性に攻撃を始める始末で、事態は勝者なき泥仕合の様相を呈してきている。他方、はたして、豊洲に、外人観光客は行きたがるであろうか?これはかなり疑問である。整然と隔離、管理された最新の市場は、単なる流通の工場であり、歴史も文化も生活も全てをなくした空疎な空間でしかない。
観光すなわち文化を資源にすることは、歴史、景観、体験、そして生活すべてを感じられる場を提供することである。
本来であれば、築地の役割の衰退と継続すべき、そして観光資源としての再生を含む総合的な地域活性化ビジョンを元に、1000年の都市計画をすべきであったのが、単なる土地転がしの不動産、建設ビジョンで終わったことが返す返すも残念である。働く人、訪れる人、そして、築地の魚で商売を営み、そのサービスを楽しむ人と幅広い、広がりを持つ社会交流を提供するという文化の深みがあってはじめて観光政策は成功する。表面的な対応で参るほど、観光客は甘くはない。スラップビルドにより、当然のごとく文化遺産を破壊してきた日本の公共事業官民複合体からの脱却による新しい開発哲学の構築が必要である。







2014年11月4日火曜日

異次元的金融緩和と漏水問題

2014年10月31日、ハロウィーンの「Trick or Treat」ならぬ「Trick to Tweak (Inflation)」のために日銀は約80兆円の債券市場介入を行った。大した度胸、確かに異次元の金融緩和だ。一日で日本のGDPの15%くらいの国債を買い付けた。もちろん15%を使ったわけではないが、それだけ債務が増えたことは間違いない。これまでの買い付けと合わせると、GDPの75%となり、絶対額でもECB(欧州)を超える。其の結果が世界中の株価を押し上げた。つまりは日本の余剰資金が世界中にながれ込むことが既にわかっているということだ。すでに政府は日本の年金基金で海外の債権を買い付けを大幅に緩和している。2つのイベントが重なって、ダウは史上最高値をつけたことになる。つまり、余剰資金が投資に回らないことはすでに政策に組み入れられている。

私の仕事では途上国の水道ネットワーク改善に関わることが多い。途上国の水道の最大の共通課題は、配水パイプのネットワークがちゃんとメンテされず、そこらじゅうで破れ、水漏れしていることだ。ひどい都市では80%の漏水がある。そんなに水が無駄になるのなら、送水しないほうがいいくらいだ。漏水がひどいと、配水時間を限って、漏水を少なくしたいと思うのは自然の反応だ。そうすると水が足りないと不満が市民から出てくる。それに反応する為政者は、更にみずをつくろうとする。テープカットをして、私が水問題を解決すると高らかに宣言する。換気した市民はまた、選挙で投票してくれるということだ。水をさらに作り、水圧を上げると、漏水は帰化給水的に増えるので、漏水は更に増え、水不足は一向に解決せず、選挙ごとにこれが取りあえげられるということになる。

金融緩和もある意味一緒だ。グローバリズムがここまで進化した世界経済では、経済中心で、お金が増えると、水のように低くに流れていく。日本の金融緩和は、スペイン、インド、あるいは、地球の果てのバブルを引き起こす。

政策動機は「デフレマインド」を回避するため、「景気刺激」ということではない。直接の目標は物価上昇。原油の値段が下がってきてデフレマインドがはびこってきたのが動機らしい。片や、大幅な貿易赤字をエネルギー輸入=原発停止として、再稼働を国民に迫りつつ、かたや一生懸命円安にし更にエネルギー購入費を釣り上げる。後世、史上最大のトリックスター政策と評されるかもしれない。しかし、マインドを変えるためだけに80兆円使うか?


マインドは大事、日本人にかけているのは、金持ち感ではなく、ゼロからでもイノベーションできる本物の自信ではないか?唯一望むのは、これで景気は持ち直したということにして消費税値上げの口実になることは避けてほしい。政策は手品ではないはずだ。

2014年10月14日火曜日

モラトリアムの国の終焉

人間というものは、とにかく、面倒なことは、後に回す、決断を先延ばし、先送りにするという悪弊をもっている。これは自分自身も含めての反省だが(ちなみに夏休みの宿題を最終日以前に終えた記憶が無い。)、この傾向は日本社会に特に強いのではないかと最近思う。

不確実性が高い状況においては、我慢して待つことにより状況が展開する場合もあり、合理な側面もある。しかし、悪意のあるものも多い。先延ばしにより、後任に責任を取らせる、とりあえず予算を確保するといった詐取性をもった先延ばしもある。

ちなみに国債の乱発と公共事業による景気浮揚策はその国家的発露かもしれない。原発の廃棄燃料処理、あるいは化石燃料大量消費も科学技術の発展という後世の努力への勝手な期待によって正当化されているともいえる。未来に視座を移すことに失敗すると、人類の滅亡もそう遠くない話になるやもしれない。


仕事をしていても、なかなか日本の上は決断をしたがらない。場合によっては情報を取ることさえ禁じる者さえいたりする。情報集は、不確実性を減らす、危ないものは早めにやめるのも、正しい判断だ。やめて次を狙えばよい。日本では、とかく最後まで諦めないことが美徳化されすぎている傾向がある。しかし、ずっと頑固に同じことにしがみついて、人生を棒に振った話は、ニュースにはならないのだ。

不確実性と戦う技術を早くからみにつける必要がこれからはあるだろう。終身雇用も、学歴社会も、福祉社会も終焉しつつある。あるのは激動の社会での生き残り術だ。


不安に目をつぶると、更に恐怖が増幅する。情報収集による早い決断は未来の不確実性を減らす唯一の方法だ。未来の困難に目を見開いて向かうとき人は恐怖から初めて開放される。

2014年5月3日土曜日

日本ODAの変化

昨今の日本のODAは、日本企業の海外進出支援が一つのはやりとなっている。その背景には、かつては途上国であった韓国、中国に海外市場で後塵を拝するようになってきて、日本産業界の競争力に陰りが見え始めたということがある。アベノミクスによる円安誘導にもかかわらず、輸出は伸びず、割高になった石油・ガス輸入額だけが伸びて、貿易赤字を垂れ流してる現状に政府のあせりもある。経団連等産業界はODAの裨益が少ないと批判を続けていたということもある(よく引き合いに出されるのが円借款事業の日本企業受注率が3割程度という数字だ)。
他方、途上国に駐在の日本人に話を聞くと、彼らが現地で商売をする上で、ODAは大いに役に立っているというのだ。紐付きでない、日本の援助、総じて、役に立っていると途上国の人々は好感を持って受け入れている。その意味でODAを通じて日本人総体としての人の良さみたいなものを感じていると言っていい。
英国、米国、フランス当たりのODAは国家戦略に基づいて、自国、産業政策に結びついた巧妙な仕組みになっている。サッチャーが売り込みをしたりしたことを日本の産業界はずっと指をくわえてみていたのだ。日本はあまりにも純粋に相手国のニーズ中心で、日本経済界の裨益がまったくもって少ないという批判に呼応して制度変革が起きかけているということだ。そこで円借款も日本の企業受注しやすいものが優先となる。
貧すると鈍するという。これまで築いてきた日本のソフトパワー(ODAによる日本への尊敬の念)というものを、壊すことにならないことを願ってやまない。


2012年9月20日木曜日

尖閣列島問題の泥沼化を防ぐ方法


尖閣列島の国有化と中国での抗議運動の激化
なんだか日中関係は戦後最悪の様相を示しており、それこそ、柳城湖事件まがいが起こるのではないかと心配している最近です。

とんでも打開策
この打開策として
野田さんに残された道は、
1)中国の後任の大使に石原さんを指名する(意味ないなあ)
2)尖閣列島をロシア人に売る。(だからと言って日本の領海がへるわけではない)
3)通貨スワップの代わりに韓国と竹島と尖閣のスワップをする。韓国のほうが日本よりも受けが良いかもしれない。
4)島を爆破してしまう。(領海が減ってしまいますが、紛争の種はなくなります。)
5)じっとほとぼりがさめるのを待つ。
6)ウィグル、チベット、台湾の独立運動を支援する。(と脅かしてみる。)
たぶん、5)を次の総理は狙うでしょうね。
あまりぱっとしませんね。

アイデアの公募
どなたか、いいアイデアをお持ちの方はお教えくださいとFBで呼びかけたところ
とりあえず次のようなアイデアが持ち寄られました。

7)北方2島先行返還でロシアと友好条約を締結。

8)アメリカ軍基地を一部移転。オスプレイを配備する。
9)日中共同でリゾート地を作る。(雇用が生まれる)
との三つのご意見を賜りました。
更なる対話
これにさらに悪ノリする形でわたしが出した提案が次のもの。

10)アントニオ猪木をつれてって、尖閣にリングをつくり、日中K−1大会をする。団体戦で勝敗を決める。大会は毎年行って勝った側に領有権を1年間付与する。ただし、島の施設の建設は両国合意のもと、負けた方が請け負う。
11)中国人が不法侵入しなくていいように、入管を設置して、一時滞在ビザを発行する。ビザの発行条件は島内だけで、料金は100ドルくらいに設定する。
12)国家再生戦略の一環として中日友好記念博物館を設立する。

対話の進化
すると11番のアイデアに対して
13)11)に付随して、カジノを設置すれば、喜んでビザを取って入国するかもしれません。マカオやタイと隣国の国境のように。
というご提案をいただいております。
いまのところ一番有望な提案が13番で、これを東京で実現できなかったカジノということで石原都知事に任せる事で話がまとまりそうです。

お詫び
中国に赴任されている方々はきっと不安な毎日を御過ごしのことを思うと不謹慎とは思います。どうか平穏な日が一日も早く来る事を心から願っております。
日中の関係改善はお互い笑い合える仲になる事ではないでしょうか。

2012年9月10日月曜日

シャープの悲劇:集中と選択

シャープの苦境
最近の経済情報を読むとどうもシャープがやばいらしい。借金がかさんでいて、かつ株価が暴落しているので、台湾の救世主からの投資もうまく進んでいない。
日本の凋落する家電の中にあってほんの数年前までは世界の液晶TVのトップランナーとして意気軒昂だったように思うのだが、最近の栄枯盛衰のサイクルの短さには正直ついていけない。

重電からTVまでを手掛ける東芝、日立、あるいは液晶TV優位を見誤ったソニー、パナソニックをしり目に高級TV路線を独占するために果敢な集中と選択の戦略をとりシャープはマスコミの寵児であった。実際にシャープの売り上げは倍々ゲームで2001年から伸びていた。

現在、赤字を垂れ流しているがその中核部門の液晶TVとソーラーパネルだということで、どちらも吉永小百合さんのコマーシャルの印象が強い。液晶では世界の亀山と誇った巨大工場が足かせになっているようだ。コピー機とかクーラーとかは黒字で、中核部門の赤字を補完できるわけがなく、巷の噂ではコピー、空調部門を売り払うのではないかとの憶測さえ流れているようだ。そうなると赤字だけの企業になるかもしれない。赤字をなくすのであれば、むしろTVとソーラパネルを売り払うべきかもしれない。

集中と分散
結局のところ、集中と選択というのは長い目で見た場合には正しい戦略なのかを疑う必要はないであろうか?都市でいえばかつてテキスタイルで栄えたイギリスのリバプールとマンチェスター、今やイギリスの中でも衰退した都市の象徴である。社会学者で都市の歴史を研究で著名なジェーン・ジェイコブズはこうした一産業に特化した都市とより複合的な産業集積都市であるバーミングハムを比較して、より複合化した都市のほうが長期的には繁栄を維持しているとしている。企業についても同じことが言えるのではないか。

電機業界の覇者であったソニー、パナソニックの時代には日立、東芝という重電を屋台骨とする企業は常に後塵を拝していた。集中と選択を強化したシャープに対しても随分と見劣りがしたような気もする。そうした企業がいまや、数少ない黒字企業となっている。勝負は数年では測れない、100年生き残る企業はなかなかいないということかもしれない。


マネジメントコンサルタント、インベストメントバンカーでもてはやされ、企業が商品のように取引され、工場も切り身で売買され始めた頃から、その論理ベースとして使われたのがこの「集中と選択」であった。その少し前にもてはやされたのが分散によるリスクの最小化を唱える「ポートフォリオ理論」だったことを考えると、シャープの栄枯衰勢も経営哲学のサイクルのレガシーと言えなくもない。

基本に帰る
シャープのことを調べ始めて、初めて知ったのだが、金属製のシャーペンを開発し、その普及のきっかけとなったはシャープで、社名自体もそこに由来するらしい。社是は他社がまねするようなものを作ること。液晶TVはみごとにまねされて、存亡の危機に陥っているが、ぜひ「他社のまねできない」ものを作る会社に復活してほしいと願っている。

2012年2月20日月曜日

若者はなぜ反乱しないか?

若者はあわれ
今の若者を見ていてつくづくかわいそうだと思う。そしてじじいどもの悪知恵にほとほと嫌気がさす。バブル崩壊後、就職氷河期でキャリア、すなわち能力開発をする機会を奪われ単純労働者として歳を重ねた若者もすでに40代になろうとしている。本来なならば日本の経済をけん引する世代がその能力を発揮することなく生殺しのままである。その間、行政改革は遅々として進まぬまま、日本の財政は悪化の一途をたどり、2011年には国地方を合わせた債務GDP比率は200%を超えている。

財政赤字を解消するために震災直後にもかかわらず増税が既定路線となりつつある。増税のうたい文句は「将来の世代につけを残さないために」である。しかしながらこのレトリックには大きな嘘がある。 平成22年の社会保険庁の発表では、年金の納付率は約6割、4割の人が払っていない。もちろん、年齢階層別にみると年齢が上がるほど納付率が高く、若者ほど納付率が下がっている。若干古いデータではあるが平成19年のデータによれば、20-25歳代および 25歳ー30歳代の納付率は52%、56%である。現在はもっと下がっており、実質加入者は4割を切っているはずである。

  年金破綻
かつて年金破綻がかなり政府発表も含めて喧伝されたことがあり、その負のキャンペーンがこうした若者の低い加入率に大きな影響をあたえていると考えられる。2055年には65歳以上の老齢人口は全人口の40%を超えると考えられており、労働者2人で1人の老人を支えることになるという人口推計がそうした議論のベースとなっている。
  年金制度維持の奇策
解決策は何か?
これは筆者の勘ぐりであるが、あの一連の情報リークは加入者を減らすのが目的で行なわれた情報操作だったのではないかと思っている。なぜなら年金問題は将来の問題であり、今は十分に足りて、余剰金もある。つまり現在の問題ではないからである。年金は現在の世代の納付により受益者への支払がされるというのが基本であるが、不足分は国庫支出でまかなう仕組みとなっており、そのために消費税が少しずつ、あげられるというのが既定方針である。では未加入者はどうなるかというと、将来消費税によって、加入者の年金支払に貢献するのみで何も得られない。たとえ、不満の声を上げても、それは義務である加入を怠ったあなたの責任と切りすれられて終しまいである。

例え、老人人口が増えても年金受給者が減ればシステムは崩壊しない。例えば3割の加入率だったとすれば約8人の労働者が1人の老人を支えることになる。加えて消費税10%を年金に使うとしよう。将来のGDPは減少して300兆円だとして、そこからの上がりが約30兆円、人口は減って8000万人だとすれば、そのうち約3000万人が老人で、その3割、約1000万人に年金を支払わねばならないが、一人頭使える消費税は300万円もある。かなり楽勝でな感じではあるがいかがであろうか? 


若者はまず反旗を翻すべし
消費税の値上げ、年金制度の維持で誰が特をするか、その一番は公務員、次は大企業の社員と言うことになるであろう。一番割を食うのが、フリーターとか契約社員というステータスの人たちで、今の生活費の工面のために年金を払うことができないという人たちである。そういう人たちも、コンビニでペットボトルとおにぎりを買い、携帯で友人と口を交換するたびに、消費税を払い、老人の世話をすることになる。もちろん、現在の生活を作ってくれた先人が 年老いたときに世話をするのは現世代の義務ではあると思う。しかしながら、年金未加入の若者は年金制度を維持するために貢献しても、自身が老人となったときには、一人ほっぽり出されるのである。それでよいのか? 将来に付けを残さないというレトリックにだまされていいのか? 若者は早く目覚め、たちあがるべきではないか?