2014年11月4日火曜日

異次元的金融緩和と漏水問題

2014年10月31日、ハロウィーンの「Trick or Treat」ならぬ「Trick to Tweak (Inflation)」のために日銀は約80兆円の債券市場介入を行った。大した度胸、確かに異次元の金融緩和だ。一日で日本のGDPの15%くらいの国債を買い付けた。もちろん15%を使ったわけではないが、それだけ債務が増えたことは間違いない。これまでの買い付けと合わせると、GDPの75%となり、絶対額でもECB(欧州)を超える。其の結果が世界中の株価を押し上げた。つまりは日本の余剰資金が世界中にながれ込むことが既にわかっているということだ。すでに政府は日本の年金基金で海外の債権を買い付けを大幅に緩和している。2つのイベントが重なって、ダウは史上最高値をつけたことになる。つまり、余剰資金が投資に回らないことはすでに政策に組み入れられている。

私の仕事では途上国の水道ネットワーク改善に関わることが多い。途上国の水道の最大の共通課題は、配水パイプのネットワークがちゃんとメンテされず、そこらじゅうで破れ、水漏れしていることだ。ひどい都市では80%の漏水がある。そんなに水が無駄になるのなら、送水しないほうがいいくらいだ。漏水がひどいと、配水時間を限って、漏水を少なくしたいと思うのは自然の反応だ。そうすると水が足りないと不満が市民から出てくる。それに反応する為政者は、更にみずをつくろうとする。テープカットをして、私が水問題を解決すると高らかに宣言する。換気した市民はまた、選挙で投票してくれるということだ。水をさらに作り、水圧を上げると、漏水は帰化給水的に増えるので、漏水は更に増え、水不足は一向に解決せず、選挙ごとにこれが取りあえげられるということになる。

金融緩和もある意味一緒だ。グローバリズムがここまで進化した世界経済では、経済中心で、お金が増えると、水のように低くに流れていく。日本の金融緩和は、スペイン、インド、あるいは、地球の果てのバブルを引き起こす。

政策動機は「デフレマインド」を回避するため、「景気刺激」ということではない。直接の目標は物価上昇。原油の値段が下がってきてデフレマインドがはびこってきたのが動機らしい。片や、大幅な貿易赤字をエネルギー輸入=原発停止として、再稼働を国民に迫りつつ、かたや一生懸命円安にし更にエネルギー購入費を釣り上げる。後世、史上最大のトリックスター政策と評されるかもしれない。しかし、マインドを変えるためだけに80兆円使うか?


マインドは大事、日本人にかけているのは、金持ち感ではなく、ゼロからでもイノベーションできる本物の自信ではないか?唯一望むのは、これで景気は持ち直したということにして消費税値上げの口実になることは避けてほしい。政策は手品ではないはずだ。

2014年10月14日火曜日

モラトリアムの国の終焉

人間というものは、とにかく、面倒なことは、後に回す、決断を先延ばし、先送りにするという悪弊をもっている。これは自分自身も含めての反省だが(ちなみに夏休みの宿題を最終日以前に終えた記憶が無い。)、この傾向は日本社会に特に強いのではないかと最近思う。

不確実性が高い状況においては、我慢して待つことにより状況が展開する場合もあり、合理な側面もある。しかし、悪意のあるものも多い。先延ばしにより、後任に責任を取らせる、とりあえず予算を確保するといった詐取性をもった先延ばしもある。

ちなみに国債の乱発と公共事業による景気浮揚策はその国家的発露かもしれない。原発の廃棄燃料処理、あるいは化石燃料大量消費も科学技術の発展という後世の努力への勝手な期待によって正当化されているともいえる。未来に視座を移すことに失敗すると、人類の滅亡もそう遠くない話になるやもしれない。


仕事をしていても、なかなか日本の上は決断をしたがらない。場合によっては情報を取ることさえ禁じる者さえいたりする。情報集は、不確実性を減らす、危ないものは早めにやめるのも、正しい判断だ。やめて次を狙えばよい。日本では、とかく最後まで諦めないことが美徳化されすぎている傾向がある。しかし、ずっと頑固に同じことにしがみついて、人生を棒に振った話は、ニュースにはならないのだ。

不確実性と戦う技術を早くからみにつける必要がこれからはあるだろう。終身雇用も、学歴社会も、福祉社会も終焉しつつある。あるのは激動の社会での生き残り術だ。


不安に目をつぶると、更に恐怖が増幅する。情報収集による早い決断は未来の不確実性を減らす唯一の方法だ。未来の困難に目を見開いて向かうとき人は恐怖から初めて開放される。

2014年5月3日土曜日

日本ODAの変化

昨今の日本のODAは、日本企業の海外進出支援が一つのはやりとなっている。その背景には、かつては途上国であった韓国、中国に海外市場で後塵を拝するようになってきて、日本産業界の競争力に陰りが見え始めたということがある。アベノミクスによる円安誘導にもかかわらず、輸出は伸びず、割高になった石油・ガス輸入額だけが伸びて、貿易赤字を垂れ流してる現状に政府のあせりもある。経団連等産業界はODAの裨益が少ないと批判を続けていたということもある(よく引き合いに出されるのが円借款事業の日本企業受注率が3割程度という数字だ)。
他方、途上国に駐在の日本人に話を聞くと、彼らが現地で商売をする上で、ODAは大いに役に立っているというのだ。紐付きでない、日本の援助、総じて、役に立っていると途上国の人々は好感を持って受け入れている。その意味でODAを通じて日本人総体としての人の良さみたいなものを感じていると言っていい。
英国、米国、フランス当たりのODAは国家戦略に基づいて、自国、産業政策に結びついた巧妙な仕組みになっている。サッチャーが売り込みをしたりしたことを日本の産業界はずっと指をくわえてみていたのだ。日本はあまりにも純粋に相手国のニーズ中心で、日本経済界の裨益がまったくもって少ないという批判に呼応して制度変革が起きかけているということだ。そこで円借款も日本の企業受注しやすいものが優先となる。
貧すると鈍するという。これまで築いてきた日本のソフトパワー(ODAによる日本への尊敬の念)というものを、壊すことにならないことを願ってやまない。